鬼嫁入院日誌
11月22日(木)
今朝起きると、少量とは言えない出血があった。パジャマのズボンをすぐさま洗濯するほど。これはヤバイと思いつつ、平静を装い、朝食とお弁当の用意をしていた。
いつも通り、しばしの土俵入りを終えて、たけぞう氏が起きてきた。「血がいっぱい出た」と言ったら、「病院へ行け」と言われた。
仕方なく仕事を休んで病院に行き診察をすると、切迫早産で「即入院」と言われて、車イスに乗せられ(車イスなんて乗るのは初めてだ)、気付くとベッドの上で、点滴をされ、尿道に管まで入れられてしまった。う、動けない。しかも、とにかく点滴も尿道の管も痛い。更に、筋肉注射(ホルモンのバランスをよくするヤツらしい)までされた。これも滅法痛かった。
あれよあれよと入院させられ、誰にも連絡が取れず、辛うじて携帯メール(病院だから、本当は当然禁止)で方々に連絡したら、母が来た。「病院にいれば安心よー。お母さんなんて、1ヶ月も入院したわ、あはは」とだけ言って、さっさと帰ってしまった。
痛いし不安だし淋しいし、不覚にも涙が出てしまったが、御飯が美味しくて、元気になった。単純だね、我ながら。因みに、今日は天ぷら。
11月23日(金)
真夜中に点滴の警告音で目が覚めた。一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。あ、そうか、ここは病院だ。ナースコールを押しても、なかなか来てくれないので、同室の他の人に迷惑やなぁと思いつつ、寝てしまった。この点滴は、しっかしよく警告音が鳴るのだ。まぁ、いいけど。
で、また起こされたと思ったら、朝6時頃で検温の時間だった。「お、病院らしいじゃないか!!」と嬉しくなる。ウチには体温計がないので、ここ数ヶ月、熱を計ったことってなかったけど、さすが妊婦だけあり、37.○度だった。ふうん。
病院の午前中は、いっぱいすることがある。検温したり、血圧や脈を計ったり、顔を拭かされたり歯を磨いたり(全て寝たまま)、体を拭かれたり、出血の様子を確認されたり、御飯食べたり(とにかく、これは唯一最大の楽しみ。だって、ホテルの御飯みたく美味しい)、回診があったり、あと、お腹の様子を調べる機械をつけて、中の人の心音とお腹の張り具合をみたり(これ、結構楽しい。中の人の音がちゃんと聞こえて、たまに、ドスッ、ボスッなどと、お腹をキックする音とかもします。安らぎのひと時ねん。それに、赤ちゃんの心音は、なかなか心地良いもので、ついつい眠くなります)。そうして、ようやく9時頃になると落ち着いて眠れるのね。で、起きるとまた昼御飯。
今日は、おやつの時間にたけぞうさんが来た。私のリクエストではあるが、くだらない本をいっぱいと、ヘヴィメタルなMDを持って来てくれた。こっちは、私のシュミじゃないので、一瞬だけ聞いてやめた(切迫早産で入院してる妊婦がヘヴィメタ聞いてたらヤじゃない?)。主治医の先生が心配して見に来てくれた時には、よりによって「鳥頭紀行」に没頭していて、気まずかった…。まぁいいけど。
ああ、夜のロールキャベツも美味しかった。それにしても、寝過ぎで頭痛い。
11月24日(土)
あっという間に入院3日目。
ここは4人部屋なのだが、色んな人がいて面白い。特に、西村知美ばりにスローテンポでブリブリのお嬢様らしき人。あまり友達になれそうにはないタイプなのだけど(あまりにテンポが違いすぎて、イライラしてしまいそうである。いや、勿論とても良い人なのだとは分かるんだが)、話を傍から聞いている分には、エライ興味深いのだな。
あと、そのお隣の人は、どうも子がいるらしく、お見舞いに来ていて微笑ましい。ママと一緒が良くて、泣いたりする。聞くと、私も、母が妹を妊娠している折に同じ切迫早産で入院中、見舞いに来ては、「お母さんと一緒に寝る」と言ってきかなかったそうで、父は相当てこずったらしい。結局チョコレートか何かでごまかされたそうだけど(苦笑)。と、今日はお見舞いに来てくれた(とゆうか、おやつを持ってきてくれた)母と、そんな話をした。
しかし、折角栄養に気を遣っても、こんな風に寝て食べてばかりじゃ、絶対にデブるんじゃないか?!全くもって不安であるぞ。
それにしても、点滴が痛いので訴えたら、なんと入れ方がまずかったのか、静脈炎とやらになったらしい。スゴイ腫れて痛いの。我慢も考えものです。
それと、寝ながらうどんは喰えんて…
11月25日(日)
朝、いつものように主治医の先生が様子を見に来てくれた。福のある顔をした先生なので、先生のお顔を拝見するだけでニコニコしてしまう。と、思ったら。「明日ね、手術するよ」とのこと。むむむ。初入院に初手術。今日の午後9時以降、絶飲絶食(なんか響きすらオドロオドロシイ)とゆーのが、またツラそうだ。急いで、明日の朝食のメニューをチェックする。あ、なんだ、ピザトーストか。じゃあ、いいや。ぶどうパンなら泣くけど。
因みに、手術は開きかけている子宮口を巾着の口みたいに縫って縛ってしまうというもので、これを抜糸するまでは、ほとんど早産の心配はなくなるらしい。とにかく良かった。
それにしても、今、午後2時半なんだが、同室の西村知美と、その隣のメチャメチャ声がデカくてよく喋るオバハンが、午前中の9時頃からしゃべり続けている。西村知美は、実は天然ボケのフリをしているだけで、なかなかしっかりしているのに驚いた。賑やかなオバハンは、只今3人目を妊娠中らしく、いろいろと新米の西村知美にアドバイスをしているが、「本当か?」と思うことが多いぞ。知美のキツいツッコミや俗的なコメントにも驚くが、根拠のないオバハンの力説にも目が丸くなる。あと、知美の、看護婦やダンナとしゃべる時の変わりぶりにも感心するよ。いつになったら終わんのかな、この四方山話は。せめて、もう少しトーンを落として話してくれい。ここは、一応大部屋なんだぞと。
と、文句ばかり言いたくなるのは、やっぱり明日の手術が実はコワイのだった。麻酔覚めなかったらどうしようとか(そんなわけ、絶対ないんだけど、局部だからね)。
11月26日(月)
夢の中で、やかんのお湯が沸いていた。早く止めろやと思ってたら、なんと自分の点滴の警告音だった。それでもまだ夢の中の私の代わりに、お隣のお方がナースコールしてくださった(汗)。ああスミマセン、南無三。そうなんだ、私の爆睡ぶりといったら、桜庭に2連勝したシウバ並にスゴイんだよ(よく分からん喩えだが、今、私の中でのスゴイ人NO.1ってことで)。
それはともかく、朝恒例の検温と血圧と看護婦さんの問診が来た。脈を計りながら言う。「ちょっと動悸がある?緊張してるのかな?」って、んな、寝起きからキンチョーするやつがいるかぁ!!私は、常に脈拍が100くらいあるのよ。聞くところによると、かの高橋尚子さんは、30いくつかだそうだね。3倍以上ってどういうことだ?私はエラくエネルギー効率が悪いのか、はたまた、どんどん活性酸素を作って老化してゆくのか、どちらにしても良いことなさそう(ああ、すみません。理科系苦手なんで、テキトーなイメージでものゆってますのじゃ)。
ああ、それに、「お通じは?」だって。こんな、一日中寝たきりで、尿道に管挿されて動けもせんのに、そんなもん出るわけないじゃんねぇ。それこそ、私ってば、妊娠前には便秘になんてまるで縁のない人間だったのに、うー、これはツライ。世の中の便秘の皆様、大変なんですね。どうぞ神の御加護がありますように。
と、否が応でも、朝7時からハイテンションの入院妊婦なのでした。ああ、そして、お腹がメチャメチャ空いているのに、今日は手術だから朝ヌキ。ツライねー。
と、そんなことを書いていたら、手術だといって、ストレッチャーに乗せられて、院内を引き回された。「おー、ドラマみたい。ERとか」と、バカ言ってたら、看護婦さんに笑われてしまった。
そうこうしているうちに、手術台に乗せられた。とにかく手術室なんて初めてなので、いろいろ物珍しく見渡したり、あのデカい丸いライトの数を数えているうちに、手足を固定され、嘘発見器みたいなのを指に取り付けられ(脈とかを診る為らしい)、血圧計を腕に巻かれ、「眠くなるお注射するからねー」とかって、スッゴイ痛い麻酔の注射を肩に打たれた。「おいおい、全身麻酔かよ!」とサマーズ三村的ツッコミを心の中で入れつつ、一生懸命意識を保とうとしているのだけれど、アイマスクをされ、酸素を嗅がされ、遥か遠くでする先生の「マブチさーん」の声に返事もできず、天井や先生の顔や色んな人の顔が、ぐるぐると二日酔いみたいに回って、いろんなイメージが渦巻き状に回って吸い込まれるような感覚があったかと思うと、そこはもう、目くるめく未知の世界だった。なんか、曼荼羅のような感じでもあり、遺伝子製造工場のような感じ(なんのこっちゃ)のところで、SF映画の主人公になった気分でいるうちに赤ちゃんの泣き声がして、「あー、それ私の赤ちゃん、どこ連れてくのさ!!」と思ってると(結局、これ全部夢なんだけど)、急に遠くから現実的な音達(手術器具をカチャカチャと洗う音、水の音、人の話し声etc.)がやってきて、手足の感覚が戻ってきたのであった。そろりそろりと目を開けると、同じ手術台の上で、とにかく腰が強烈に痛く、早く自分のベッドに戻りたいよーと、すっかり俗人に戻っていた私でしたのだ。
それにしても、面白い体験をさせてもらったことです。ま、一度で十分ですが。しかしね、手術始めてから目が覚めるまで、1時間もかからなかったのではないか。あっという間の出来事でした。不思議と、コワイという感じはまるでなかった。
手術が終わって、早速実家に電話したら、母は水泳教室でいなくて、留守電に「手術が無事終わりました」と入れたけれども、案の定、顔見にも来てくれなかった。ははは。親子なんてそんなものである。その代わり、仕事を早退して、たけぞうさんが来てくれた。エラく嬉しかった。だって、せっかくのこの体験を誰かに言わずにおられまいて。ねぇ。
そうそう、お隣に新しい患者さんが来た。ちらりと見えたダンナ様が、見た感じ、ウチのと似たような…、と思ったら、なんと川崎大師のお坊さんなんだってさ。・・・(無言)。とにかく、このお隣の人の話は、何から何まで初耳だらけで面白い。飽きなくて良いです。
11月27日(火)
ツ、ツライ…。寝ていることが、こんなにも苦痛とは。今回の入院は、本格的な安静状態で、ベッドの上に起き上がることすら許されない。しかも、左に尿の管、右に点滴じゃあ、寝返り打つのも一苦労なのだ。
結局私の場合、中の人も無事で、このまま妊娠を継続できそうなので、何と言うか、要は非常に生産的な入院なわけで、だからこそ、まぁなんとか耐えられるという気がするのだけれど、これが、いつ治るとも分からない病気で寝ている人だったら、どんな精神状態なのだろうかと、色々考えさせられてしまった。そういう人々のことを思うと、ちょっと居たたまれない。つくづく、健康とはありがたいものだと思う。病院の白い壁や天井って、思いのほか、人の精神を消耗させるんだ。退屈だろうと思って、たけぞうさんに持ってきてもらった色々な本、全然読む気も起こらない。何にもしてないのに、とにかく疲れるんだもの。あちこちが痛いし。
でも、楽しいこともあるよ。お隣の人と、スゴク仲良くなった。おしゃべり楽しいんだ。聞くと、彼女も天秤座O型なんだそうで、お互い人懐こいんだね、きっと。
今日は火曜日で、研究日のたけぞうさんが、また来てくれた。最近毎日忙しいみたいで、ほとんど休んでなかったから、今日は寝てなよ、来なくていいよと言ったんだけど(病院遠いから)、やっぱり来てくれたのは嬉しかった。たけぞうさんのことだから、私なぞいなくても、キチンと生活ができているだろうことは間違いなく、むしろ、私がするより、ずっとしっかりやっているだろうとは思うんだけれど、やっぱり、どうしてるだろうかと気になるものなのですね。ピザ頼んでないかとか(笑)。結局、ピザは頼んだらしいけど、まぁ、今回くらいは良い。毎日じゃあ困るけどさ。
手術の跡は、勿論、外目にも見えないところだし、自分でも意識できないところ(子宮頸管とゆーところ)だからなのかもしれないけど、全く、これっぽっちも痛くない。こんなもんかって感じ。しかし、その手術の名、「マクドナルド氏法」というのだが、手術台の脇に「マクドナルド・間淵洋子」と書いてあったのには笑った。腰砕けであるよ。まるで、マックのキャラ、ドナルドと結婚したみたいでさ。手術台の上の私の脳裏には、ドナルドと挙式している自分の姿さえ浮かんでしまった(苦笑)。馬鹿だねぇ全く。
そうそう、今日たけぞうさんが持ってきてくれた、冬期限定チョコボール・ココアホワイト(だったっけ?)は、美味でした。冬はチョコの誘惑には勝てないものですなぁ…。
11月28日(水)
今日はもう何も書けない。
とにかく、丸1週間、ここに来てからお通じがなく、頭の中が「便便便便便便便」と津軽三味線状態で、それ以外のことは何もない。あまり苦しいので、看護婦さんに漢方をもらって、「あ、ちょっと出るかも」と思い、ナースコールしたら(そんなことでも、ナースコールしなきゃいかんのじゃ。涙)、洋式便器型の洗面器のようなものを持ってきて、お尻の下に当ててくれた。背中が反って痛いし、こんなんじゃ、力も入らないし、出る訳ないじゃんかっ!!!
本当は、うまくいけば、今日は尿の管が取れて、ベッドの下の簡易トイレ(つまりは、白鳥じゃない「おまる」)を使える予定だったのだが、まだ術後の出血がひどくてダメだった。大学落ちた時よりショックだった。
午後の面会時間に母が来て、ひとしきり、入院中の便通事情について話し、彼女はさっさと帰っていった。彼女も、切迫早産で1ヶ月の入院体験があるだけに、話は盛り上がったね。しかし、それだけかいっ!
夜、お隣のダンナさんが、お見舞いに来て、なんとイチゴのケーキとりんごジュースを御相伴にあずかった。美味しかった。やはり徳のあるお方(川崎大師のお坊様)は違うなぁ。ありがたや。なむなむ。しかし、寝る前のケーキで体重は心配。
11月29日(木)
喉のところまで、もう「便便便」と思いつつも、今日も私は朝食を完食。私の体は、今、どうなっているんだろうか?
午後の診察で出血がおさまりつつあるということで、大目に見てもらって、尿の管を抜いてもらった。そして、待ちに待ったトイレターイム!溜まりに溜まっていたものを全て出しきり、まるで生まれ変わったような気持ちすらした(でも、ベッドの下の「おまる」でだよ…。ちょっと哀愁感じるよね)。人生はバラ色。こんなことだけでね。いや、笑い事じゃないってばさ。
それにしても、丸1週間寝ていたら、1人では起き上がることもできなくなっていた。ビックリ。こんな簡単に骨抜きになるとはね。恐ろしいことです。
今日は、お隣さんとお互いの夫について話したりして、非常に愉快であった。昔は痩せてて、今は…ムニャムニャムニャ、というとことか、似てるとこを見つけて笑いのタネにしていた。
しかし、アキさん(お隣さん)のダンナさんは、とてもロマンチストである。自分はお坊様のくせに(「くせに」なんて言っちゃ失礼だが)、アキさんに内緒で、海外旅行へ行こうと言って、その先でウエディングをしてくれたんだって!内緒で、友人とかも呼び、手配を全て自分でしてくれて。そういうのって、きっと超感激だろうなー。スゴイよね。でも、お坊さんがキリストさんに誓いなんてたてていいんだろうか…?むぅ…。
11月30日(金)
あっという間に、11月も終わり。こんな状態で師走を迎えるとは思ってもみなかったぞう…涙。
でも、今日はスゴイ前進で、術後の出血が止まって、起き上がって御飯が食べられるようになったっ!!!で、その座って食べる初御飯は「チキンカツ」。食品をちゃんと見ながら食べられるってこともあるだろうけれど、メッチャうまかったっ!しかも!!!立ってトイレに歩いて行っても良いことになった。それ以外は、まだ寝たきりだけど、気分としては、もう全然違うよー。う〜ん、トイレに行けるのが、こんなに幸せなこととは!
一昨日、散々便秘談義をして帰った母が、今日は気を利かせて、りんごとみかんを持って来てくれた。でも、便秘は昨日、ばっちし解消したのよねん…。勿論、ありがた〜く食べましたが。
母が来ているときに、「あら、先生がいらしたわ」というので振り向くと、なんと、たけぞうさんだった。仕事の合間に来てくれたのだ。ホントに驚いてしまった。だって平日の昼間なんだよ。ちょっと泣きそうになった。妊婦は感情の起伏が激しいんだ。勿論、母の手前、泣くわけなんてないけど。あ、でも笑ったんだけど、母の「先生がいらしたわ」というのは、つまりガッコの先生であるたけぞうさんを意味したのではなく、カーテン越しにヌボーっと覗いている男の人=病院の先生だと思ったらしい。母だって、こんな平日に、婿殿がやってくるなんて思いもしないしさ。しかし、お医者に見えるかね、アレが。
それにしたって、人間、1週間寝ているだけで、まともに歩けなくなるのだなぁ。何かにつかまらないと歩けないんだものね。むー、いつになったら退院できるんだろ?でも、ここでムリして逆戻りしてしまっても馬鹿らしいし、もう入院なんてまっぴらなので、焦らずゆっくりやってこーと思います。
それに、毎晩、お隣のアキさんのだんなさんが美味しいケーキを買ってきてくれるのも楽しみだしな。なんて、フフフ……。もう、入院中は、体重管理のことは忘れました。今だけ今だけ。因みに、今日はパステルのチーズケーキ。明日の分の「なめプリ」まであるのよねーん。たけぞうさんには内緒だけど。え?今まで気を遣って来たのが水の泡だと?いいのよー、特殊事態なんだからさ。ふん。どうせ、気を遣ったって、入院するときはするんだし(ちょっとヤケ)。
話は変わって、うちの部屋の向かいは授乳室である。よって、授乳の時間には、たくさんの赤ちゃんが来て、思い思いの声色・大きさで泣いている。これが滅法羨ましい。私も、出産後の入院なら、どれだけ良かったかしらん、と思う。というと、看護婦さんが、「あと3ヶ月だよ」って言ってくれた。ここの人達は、本当に、先生も看護婦さんもヘルパーさんも、とにかく親切でいい人ばかりだ。とっても良い病院です。
赤ちゃんの泣き声というのも、町中、特に密閉率の高いところで聞くと、あまり心臓にいいものではないが、ここでは全く気にならない。ホント、なーんも苦にならんよ。ただ、「赤ちゃんがいる」という認識のみ。だって、赤ちゃんは、泣くもんなんだもんねぇ。
最初、うちの親は、赤ちゃんの泣き声が気になって寝られないと困るし(うちの産院は母子同室なんだ)、個室にしたら?と言っていたけど、たぶん、自分の子以外の泣き声なんて、どってことないんじゃないかと思うぞ。夜の点滴の警告音がうるさくても寝られる私としては、なおさらね(自分の子の泣き声すら気付くかどうか不安である。笑)。それに、やっぱり同室の人がいるのは、おしゃべりできて、とっても楽しい。淋しくなくていいよ。と思うのでした。
さあ、この入院生活、あとどれくらいかなー?と、少し余裕の出てきたマブチなのでした。
12月1日(土)
とうとう12月になってしまった。今年は結構、何かとイイ年だったのに、年末になってこれだもの…(涙)。ま、でも、びくさん(中の人のこと)が無事だったというだけでも、最高にラッキーだったのだろうな、きっと。
ともあれ、入院生活10日目に突入。
今日の一番の驚愕は、お隣のアキさんが、私より先に、ちょうど1週間くらいの入院期間で明日退院するのだが、なんと入院費15万だって!私は、更に入院期間も長く、何せ手術までしているのだし、まだ妊娠3ヶ月の彼女に対し、7ヶ月の私は、日々の検査や検診事項が多いのだ。これは、絶対に倍以上になることは確実だ…。ちょっと青ざめた。
これを機に、たけぞうさんの金銭感覚が少し変化してくれることを期待せずにはおられんね。iPodどころじゃねーよッ。しばらく、Macもギターも毎月の大量の雑誌も我慢してもらわないとな。私も、これに懲りたので、仕事はすっぱり休みに入って、とにかく体を大事にすべしと思ったぞ。いい気になって出掛けすぎるのもやめるし、乗り物にもあまり乗るまい…。ふう。いい勉強になった。
さて、今日はでも、かなり退院に向けて前進があった。10日ぶりに髪を洗ってもらえたのだ!!「え、そんなに洗とらんかったんかいっ!」なんて言ってはイケナイ。入院生活とはそういうものなのである。で、今まで退院していった人の様子を見ていると、洗髪の翌日、シャワーに入り、その次の日に退院となるようだ。ということは、私の退院も間近ってことでは?!月曜日ぐらいになるのではないかと、期待大。あと少し、無理して後退せぬよう、しっかり安静にしてようっと。
ああ、そういえば今朝、主治医のK先生が毎朝恒例の見回りに来てくれた(これは回診などではなく、K先生が独自に日課となすっていることだと看護婦さんが教えてくれた。自分の患者さん全てに声を掛けて回るんだって。本当に素晴らしく素敵な先生で、私は、この先生に当たったことが、何よりラッキーだったなと思っているのだけれど)。で、いつものように「おはよー。どーおー?だいじょーぶー?」と聞いてくれるので、「はい、大丈夫ですッ!元気ですッッ!」といったら、「マブチさんは、どうしてそう、いつでも笑ってられるんだろうねえ。不思議だねえ…。ブツブツ」と言いながら出て行かれた。
確かに、私ってば、手術台の上でもニッコニコだったんだと思う。先生がやっぱり「だいじょーぶー?」と聞いてくだすったのに、ミョーに元気良く「はいッ。大丈夫ですッ。よろしくお願いしますッ!」とか言ってた。だって、なんか、「救急病棟24時」とかさ、とにかく医療系ドラマの中にいるみたいなんだもんね。滅多にないし。ま、万事無事だったから言えること。全て神サマに感謝…。
12月2日(日)
今日はいいお天気でしたね。こんな日に病院のベッドで寝てることほどつまらんことはないっス。
お隣のアキさんが一足先に今日の午後退院していった。勿論これは、とてもおめでたいことなのだが、やっぱり淋しいよー!私の部屋は4人部屋なのだが、はじめの2、3日を除き、ほとんど私達2人だったから、私達は本当に色々とよくおしゃべりをしたのだ。今朝も、朝っぱらの6時から2人で大爆笑してたら(しかも下ネタで)、血圧を計りに来た看護士さんに、「お二人とも、お元気そうですね」と笑われてしまった。ああ、それなのに。この4人部屋に今日から私はたった独り。淋しいやらコワイやら…。とにかく、つまらんし、心細いよー(泣)。
で・も。私も実は明日退院できることになったっ!!!嬉しいーっっっ(涙)。ようやくおウチに帰れるよ。病院のベッドって、なんか縛り付けられてるようでさ、たぶん、精神的なところが大きいのだろうが、居心地いいもんじゃないのさ。むー、しかし、暫くはまだ安静なので、西巣鴨にも帰れないのでした。あ、ここは、実家のそばなのでね。しばし、とゆーか、下手すると、出産まで新横かもしれんです。たけぞうさんとは別居状態が何ヶ月も続くわけだな。これはやはり、夫婦の危機と申せましょうか(笑)。ああ、浮気は、素人とMacとギターとピザだけはやめて(爆)。
そ、そんで明日退院予定ということで、今日は11日ぶりにシャワーを浴びさせてもらった。ああ、さっぱりすっきり。毎日、看護婦さんが体を拭いてくれてはいたのだが、やはりお風呂は良いねぇ…。しみじみ。色々流した感じよ。厄とかさ。あ、そうそう、産院のお風呂は、普通の浴槽の他に、座浴槽なる妊産婦向けの浴槽もあるのだな。これは、文字通り、座って入るお風呂なんだが、滅法楽チンである。まだね、立ってんのツライの。
手術したせいもあるのか、下腹っていうか、とにかく力があんまり入らないんだよねー。暫くは、電車とか乗れない。だって、たまーに親切な人もいるけれども、大抵の人は席譲ってなんかくんないもん。みんな、妊婦は思いのほか大変なのだから、電車では必ず席を譲るように!寝たふりとかしない!私も、今後は絶対そうしょうって思った。人間、なんだかんだ言って、自分で体験したり実感したりしなくちゃ分かんないことって多いな。
さて、今日は日曜日である。よって、やたらめったら見舞い客が多い。とても賑やか。因みに、見舞い客の多くは、新生児を見に来ているので、みんな結構はしゃぎ気味。となると、広い部屋に独りの私は、俄然ワビシー気分になってくる。ま、明日までの辛抱だからいいけど。
入院して、さぞかし本がたくさん読めるだろうと思ったが、結局何一つ読めなかった。基本的に横になってなきゃいかんので、その状態での読書というのは、はっきり言って相当困難。体勢的にも疲れるし、とにかく集中力が続かないんだな、これが。という訳で、辛うじて、ちっとだけ読み始めた(とゆーか見始めた)「鳥頭紀行」すら読了ならず。ああ、これは絵が下手過ぎ、ドギツ過ぎるからか。
さあ、今日の晩御飯は何かなー?もう、それだけが楽しみ。
と、御飯を食べ終わってすぐ、なんとたけぞうさんが崎陽軒のシウマイを片手にやってきた。独りで淋しかったから、またまた感動してしまった。しばし、シウマイやら何やらをたべながら、二人の時間を過ごした。御飯食べてすぐでも、崎陽軒のシウマイは美味しかった。二人で御飯を食べるなんて、何日ぶりだろう?入院前だって、たけぞうさんの帰りが毎日遅かったから、二人で御飯を食べることってお休みの日くらいだった。早く一緒に御飯を食べられるようになるといいなぁと心から思った。たけぞうさんが来てくれたので、一日が穏やかな気持ちで終わった。明日はいよいよ、退院だ!
12月3日(月)
さあ、待ちに待った退院の日。今日は点滴もないし、ウッキウキ。午前中の診察で、術後の経過も良好そうだということで、晴れて、退院して良いことになった!これで、「ああ、やっぱりもう1日いてもらおうかな」なんて言われたら、その場で先生を殴り飛ばすところだった(勿論、そんな体力はあるはずないが、気持ち的には)。
今日、1つ不安だった出来事は、新米看護婦さんの注射の練習台にさせられたことだった。かなりデカくて太い注射器(まるでコントで使うニセモノみたいに見えた)に、たっぷしと薄いピンク色の液体を入れて、婦長さんと新米看護婦さんがやってきた。「うわっ、大きい!」と素直に感想を言うと、「点滴よりいいでしょ」と婦長さんに一蹴された。そして、「ちょっと練習させてあげてねー」とかいって、それを新米さんに持たせた。勿論、私は「ええ、ええ。いいですとも。大丈夫ですよ」なんて笑顔で言って手を差し出したけど、内心はヒヤヒヤだった。きっと笑顔だって、引きつっていたに違いない。
しかし、意外と注射は痛くなかった。途中で、婦長さんが「ダメダメ、そうじゃないでしょ」「ほら、ここをちゃんと押さえないと」「針が上向き過ぎでしょ」とか、なんか色々と指導なさっている声が聞こえていたが(コワッ)、とにかくそっちは見ずに、意識を遠くへ追いやって、なんとか平静を装った。やっと終わったと思ったら、「もう一つ筋肉注射も打たせてねー」と婦長さんがまたしても笑顔で言った。やれやれと思いつつ、「はいはい、お願いします」などと調子良く言ってみた。こっちは、あっという間に終わって、たいして痛くもなかった。これだけ入院してりゃ、注射にもなれたしさ。
注射と言えば、点滴は本当に痛かった。初めのうちは、1日3本、後半は1日1本だったけれど、とにかく私は血管周りが固いとかなんとかで、すぐに痛くなっちゃって、針を毎日別のところに刺していた。そのおかげで、まるで薬中患者のように、私の腕には注射跡が大量にある。しかも、周辺は腫れて、触るだけでも結構痛い。ああ、もう点滴はやだよ。
とかいってるうちに会計の人が来た。26万だってさ。はぁ。せっかく頑張って出産費が溜まったぞう!って喜んでたのに、思わぬ出費だ。また補填しないと。でも、私はもう働けないから、後はたけぞうさんに頑張ってもらうほかないぞ。がんばってねぇ、パパさん。
それにしても、初体験をいっぱいした12日間でございました。貴重な体験ありがとうございました、って感じかな。婦長さんにも、「もう、出産まで来ちゃダメよー」と言われてしまったが、本当に本当にそうですね。気を付けます。
お世話になった皆様、ありがとうございました。
御心配をお掛けした皆様、本当にすみませんでした。
忙しい中、遠いのに何度も足を運んでくれた、たけぞうさんにも大感謝。不自由な思いをさせて、すみません。これからも暫くそうだけれど、なにとぞよろしゅう…。
鬼嫁入院日誌 完